第3章 記憶

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「ええ。だって、あなたの物ですもの」 言っている意味がよく分からない。 簡単な言葉ばかりのはずだ。 感動詞、接続詞、代名詞、名詞…。日本語が上手く繋がらない。 「お兄ちゃん」 「あ…」 花菻の声、充の視線、そして― 「ふふ。私はあなたたちを怖がらせてしまったようね。あぁ、名前を言っていなかったわ」 女性は、僕たちに言葉を挟む隙も与えず口を開いていく。 「私は、ミヤ。」 ――ミヤ。どこかで聞いた。どこで? 「あなたには昔会ったわよね」 ミヤは僕に話しかけている。 「『また来たの』」 ミヤの声が、幾年か前の記憶と重なる。
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