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そこは海が見える丘だった。
そこは海が見える墓地だった。
長身の青年と
小柄な少年が2人で
ただ墓石の前に立っていた。
「なんか喋れよ。気まずいだろ」
「今でも愛してますか?」
青年の言葉に
躊躇いながらも少年は聞いた。
「うん。……ずっと忘れない」
即答だった。
その言葉は
少年に返した答えであり。
自分自身に
問いかけた言葉だった。
雲が流れた。
沈黙が流れた。
青年はゆっくりと
青く晴れた空を見つめて、
少年の顔を見ることなく言った。
「雨が降りそうだ。……先に車に戻りなさい」
少年は無言できた道を戻って行った。
途中一度だけ立ち止まり、
振り返ることなく、
自分の耳を手でふさぎ歩いて行った。
「 …グスン」
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