Phase 3 +休息+

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 「で?何が分かったんだ?」  〈ここ数年、新暦十五年の六月以降からの全エリアの病院の記録を調べてみたら、晴香と同じような状態で眠り続けている人が何人かいたんだ〉  晴香と同じ、先の見えない昏睡状態。生命活動を維持しながら目覚める見込みが無い。にも拘らず肉体の劣化は殆ど見られず、ただひたすらに夢を見続けるだけの存在。  「それで、目覚めた人は?」  〈残念ながら目覚めた人はいない。今現在もその人たちは眠り続けている〉  「結局直接的な手がかりにはならないって事か」  正直、そんなものは期待していなかったが、毎回これでは流石に気分が下向きになる。昨日の事も相まってかなりネガティブになっている。  〈まぁな、カイトおじさんも先が見えないって落ち込んでたけど、やれることやっておかないと後々悔やんでも遅いぞ?〉  「分かってるよ、じゃあな」  通話終了ボタンを押して端末をベットに放り投げる。そして片付け終わった自分の部屋を見渡すと、隣の部屋に続くドアに目が留まる。引っ越して以来一度も主人が訪れることの無い部屋。ローマ字で書かれたネームプレート、HARUKAと記されたそれに埃が被っているのを諦める。  一年と一日前のあの事件、あの日以来聞くことの叶わない晴香の怒り声が聞けるような気がして、陸斗は入ることを禁じられていた彼女の部屋のドアに手を掛けた。
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