Phase 4 +想起+

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 「まさか、あのイカレポンチの不感症、無感動だった陸斗がねぇ」  「今となっては恋人片手に名門大学、か……考えられないわ」  エリアE、イギリス北部の小さな駅。見送りにきた友人たちの誹謗ともいえる祝辞を受けながら、守永陸斗はカバンと反対側の手を握り返す女の子に目をやる。恋人、彼方晴香はその視線に気付くとニッコリと微笑み返してくれる。って事を期待していたのだが、徹夜明けの彼女は半目を開けて船を漕いでいた。  「起きろよ、オイ!」  「うにゅ……後五分……」  まだ布団の中にいるつもりの晴香を揺する。どうせまた夜更かししてプログラムソースと格闘していたのだろう。  晴香の母親、彼方智香はエリアEお抱えの技術研究所に勤めていて、そんな母親の背中で育ってきた晴香も物心ついた頃には色々なプログラムを自分で組んでいた。  そのため周りの女の子たちとはズレた子だったが、友人たちの誹謗通り陸斗も他と比べて大分ズレていた。そんな理由で一緒くたにされる事が多く、必然的に付き合いが多くなって気付いたらそういった関係になっていた。  「お前らは相変わらずだな。なぁ海李、お前もなんか言ってやれよ」  「……ちっ、さっさと行け」  友人に突然話を振られて後ろの方で携帯端末を弄っていた海李は、こちらに仏頂面を向けるとそれだけ言ってまた視線を手元の画面に戻した。  「こっちはこっちで相変わらずか。元気でやれよ」  「あぁ、もし父さんが連絡してくれ。色々報告したいこともあるし……八年間家庭を放置した償いをしてもらわんと」  『ハハハハハ(苦笑)』
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