Phase 4 +想起+

3/17
前へ
/106ページ
次へ
 友人たちの苦笑いを背に晴香を引きずって電車に乗り込む、海李の疎ましげな視線を感じて振り返った陸斗の鼻先を自動ドアが掠める。何か言っているようだったが陸斗には聞き取ることが出来なかった。  それから暫くの間、電車に揺られ少しずつ都会に近づいていく旅路を、恋人の枕になりながら陸斗は携帯端末に表示された新聞を睨んでいた。  「またテロか。今月に入ってから何回目だよ」  新聞の第一面を占領する反体制組織によるテロの記事。バベル再建、国家解体によってそれまでの地位を無くした人間やそれに便乗して地位を権力を得ようとする人間、現状に不満を持つ人間らが集まって、無作為な破壊を行うだけの無意味なもの。レギオンが一般に普及するようになって久しい今、それらが悪用されることもざらではない。そういった連中をどうにかするために警察にもレギオンが配備されるようになったのだが、今回の記事を見てもその効果は余り期待できなかった。  第一、レギオンは人を傷つけることが出来ない。暴徒がレギオンを使っていたとしても、止める側までがソレを使う必要はハッキリ言って無い。  確かに、十年前から強化改修が進められてきた今の戦闘型レギオンは他の兵器を遥かに凌いでいるが、どんなに頑張ったところで生身の人間を相手にすることは出来ない。エリアEの最精鋭パワードスーツ部隊にかかれば、制約だらけのレギオンなど動きの良い的でしかない。制限を解除された橘花ですら僅か三人のPSに敗れ去ったのだから。  「ゲルマンの禿鷹、バルチャー部隊から引退。ロンドンのUCLに特別顧問として転属?」  「……あぁ、マリオおじさんでしょ。陸斗も前にあったことある筈だよ?」  次のページをめくり記事に食いついたところで膝の上から眠たげな声が響く。見下ろすと目を擦りながら端末を見上げている晴香が写真の軍人を指差す。前髪が激しく後退した初老の男、鷹のような鋭い目でこちらを睨みつけているその男に確かに見覚えがあった。ソレが何処での出来事か思い出した陸斗は端末を閉じて車窓を見やった。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加