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「次の駅で降りるんだからちゃんと起きててくれよ?」
「うーん、善処します」
「政治家かお前は」
ボケる晴香に軽いチョップを入れて車内を見渡す。流石に都心に近付いてきただけあって大分人も増えてきた。日系人が珍しいのか、イチャイチャしてたのが目立ったのか、矢鱈と視線が集まっている事に気づいた。むしろ今まで気付かなかったのが不思議なくらい、ジロジロと見られていた。
|まもなくキングス・クロス駅に到着します。お荷物の置き忘れ等ご注意ください|
放送通り車窓の外には近代的な風景が広がっており、目的地に到着した事をイメージさせた。
駅についてからはもう何が何だか分からなくなっていて、今まで見たこともないような人の群れに圧倒されながら、人の流れに任せてホームを進んでいく二人。一応まだ手は繋いでいるが放した方が無難じゃないか、と思わせるくらいに押し合い圧し合いされる。
「陸斗、改札口で待ち合わせでいいんじゃない?」
「うーん、ものすごく心配なんだけどなぁ」
晴香も同じ事を考えていたらしく、かなり辟易した表情でもっともな提案をしてきた。ただ二人揃って迷子になる可能性はかなり高いし、それに加えて海李の忠告も気になった。これを見越して言ったのであれば海李の先見もなかなかに役立つものだ。
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