23人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし考えている間にも流れは二手に分かれようとしていて、運悪くホームのゴミ箱で分断された二人はそれぞれ反対方向の波にさらわれて行ってしまった。
「えぇい、中央改札口で!」
「また後でねー」
そのまま陸斗は東に、晴香は西にと行ってしまい人の波が薄れてきた頃には電車から降りて既に十分近く経過していた。その後陸斗は駅の案内板を便りに中央改札を抜けて、外側の通路の壁に寄りかかる形で晴香を待った。二人とも方向感覚に優れた方ではないが人見知りをするようなタイプではない。であれば広いとはいえ一つの建物で二十分も三十分も迷子にはならない、筈なのだが壁が温まってきても一向に待ち人は来ない。
流石に心配になって連絡をしようと陸斗が携帯端末を取り出すと、晴香から一通だけメールが届いていた。どうせ迷ったとかトイレとか寝てたとかなんだろうな、と軽い面持ちで表示ボタンを押す。
|ごめん、先に行ってて|
ただそれだけ。理由も現状も書かれていないソレに嫌な違和感を抱いた陸斗はすかさず晴香にコールする。その違和感が何なのかが分からないまま、スピーカーから聞こえてくる晴香の声に耳を傾ける。
「で、何で?」
〈えーと、陸斗と別れた後にね……大家さんから電話があって荷物の搬送で分からないことがあるからって〉
妙に落ち着いた声で答える晴香。遠くの方から電車の来る音がすることを考えると、まだホームにいる可能性が高い。
〈それで至急アパートの方にくるように言われちゃって、ファリングトン駅まで電車で行くことにしたから〉
「だったら僕も行くよ。その電車逃したくらいなら問題ないだろ?」
〈私一人でも問題ないから、陸斗は先に学校行ってて〉
「問題ないっても心配だし」
最初のコメントを投稿しよう!