Phase 4 +想起+

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 着地タイミングと同時に発射されたマグナム弾がフランカーの頭部を掠める。狙いが悪いのか、うまく躱したのか分からないが次弾の装填が済む前にα3は両手で陸斗を抱えると、今度は後ろ向きに跳躍した。所謂バックステップだ。  生身の人間を持った相手を攻撃する事はまずできない。イーグルのドライバーは舌打ちをしながらデザートイーグルを捨てて横に飛ぶ。相手の一機が戦闘から離脱したおかげで包囲網に穴ができた。このまま逃げ切れれば俺の勝ちだ、イーグルは手持ちのハンドマインを無造作に放りながら人気のない広い場所、すなわち電車の線路に向けて走っていった。  「おいちょっと、放せって!」  〈それは君を安全な場所まで運んでからだ〉  一方、陸斗はα3に抱えられながら人通りの少ない道を進んでいた。ターミナルから離れる時にイーグルは確かに線路の方に向かっていた。確かに開けているし人気もないから逃走にはもってこいの場所かもしれない……狙撃手がいなければの話だが。  だがその線路には晴香が乗った電車がある。既に非常事態で電車は止まっているだろうが晴香が乗った電車のファリングトン駅到着予定時刻よりもイーグルの出現の方が早かった。  「あそこの電車に恋人が乗ってるんだよ!僕なんかよりそっちを先に助けてくれよ!」  〈分かった、分かったから。……ここで良いな〉    α3がそういうとフランカーは狭い横道に入り減速してその場にしゃがむ。アームが陸斗を開放すると、α3はコックピットハッチを開いた。中から出てきた四、五歳年上の青年は陸斗に向けて自分が着ていた防弾ジャケットを投げた。そして再びコックピットに潜り込む。  「僕がきる必要は無いんじゃ……」  「君は緊張感と言うか危機感に欠けている。用心に越した──」  ハッチが閉じる直前、何かがコックピット内に入り込んだ。直後、爆竹のような音と共に赤黒い液体がハッチの隙間から飛び散る。それが若いドライバーの血で、威力の弱い手榴弾によるものだと気付くのに数秒の間を要した陸斗は、コックピットから滴り落ちる血を見て絶叫した。
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