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〈或いは初めから僚機などいないかもしれない〉
「なんだと?」
少年は言うが速いか一瞬でオリーブのイーグルとの間合いを詰める。最早体当たりと言って良いそれにイーグルは仰け反りながら実体剣を振るう。ソレを紙一重で避けると握っていた電磁警棒をイーグルのコアに叩きつける。
しかし流石イーグルといったところか、打撃をものともせずに回し蹴りを放ってくる。比較的装甲の薄い後頭部を狙った一撃、咄嗟に腕でガードするも勢いを殺しきれず大きく体勢を崩される。
しかし体勢が崩れているのは相手も同じこと、振り抜かれようとしている脚をフランカーが強引に掴み、両者はもつれ合いながら横転した。
構造上レギオンは仰向けに倒れたら起き上がるのにかなりの労力を要する。ゲームに出てくる様な背部スラスターは搭載されていないので自分の手足で何とかしなければならない。
そして運の悪いことにイーグルはうつ伏せに、陸斗の乗るフランカーは仰向けに倒れた。圧倒的に不利な状態、しかしソレはあくまで一対一の場合の話だ。
〈今だ!〉
「応!」
陸斗の合図とほぼ同時に飛び上がるα1、落下予測位置にはイーグル、起き上がる前に相手の頭を叩き割れればこちらの勝ちだ。
〈甘いな〉
「なにっ?!」
敵機からの発信と同時に目の前からイーグルが姿を消し、唐竹割りよろしく振り下ろされた警棒は地面に突き刺さった。直前で横に転がったイーグルはその勢いのまま立ち上がろうとしている。が、ソレが立ち上がることは二度と無かった。
〈私にデコイをやらせるとはな〉
「倒せたんだ。文句無いだろ」
フランカーの上体をゆっくりと起こしながら陸斗はマシンガンを腰のハンガーに戻した。つい今し方イーグルの頭を撃ち抜いたソレは銃口を燻らせていた。
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