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ある暮れのことである
寒さに耐えながら
この通り雨が去るのを
まだかまだかと
待っている1人の男がいた。
男の名前は浦賀 宵介
とくに地位があるわけでもない
ただの武士であった。
宵介は、
何処より
用いたかも知れない
一本の刀が
不自然にも立て掛けてあった
ことに気がついた
その刀に
触るともなく
見ているときだった。
その鞘の美しさに宵介は
不覚にも見とれていったのだ。
なにも考えず
その刀についに触れた瞬間
寒い日の暮れとは
一転した景色が
宵介の回りを包んでいった。
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