魔術師

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休憩しているとは言え、業務の怠慢を続けるわけにも行かず、上の空になっているリフィの事には触れずに業務、書類等に目を通した。 魔術道具の申請、召喚に伴う教室の結界強化、謎の領収書、風紀委員からの苦情、果たし状。 困った書類も多々あったが、確実に仕事を行っていると周りの音が次第と気にならなくなっていく。 「澪都様?」 「んっ? どうしたんだ?」 集中して作業していたのかリフィの言葉で意識が戻ってくる。 「書類の整理ばかりでは身体に毒です。息抜き程度になってしまいますが、グラウンドに出て生徒の授業を見ていただいても構いませんよ」 「そうか? ここの魔術師のレベルも気になるからな……少し顔を出してくるよ」 「はい。くれぐれも息抜き程度ですから、問題だけは起こさないでくださいね」 そんな言葉を綴るリフィの顔は柔らかい佳苗と似た雰囲気を醸し出していた。 「あぁ、わかってるよ。それじゃ行ってくる」 椅子から腰を上げると白い法衣を身に纏い理事長室を出た。 向かうのはグラウンド、学校には不可視の結界が張られている為、外から魔術に関する行為を目撃される事はない。 魔術師として、一般の人間に魔術の存在を知られてはならない。 それが、魔術師としての掟。
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