プロローグ

2/3
前へ
/14ページ
次へ
大きな鉄格子の正門の前で立ち尽くす一人の男。 桜舞う春、明らかに場違いな男は深紅の髪、深紅の瞳、その風貌は学校に似合わないとしか言いようがない。 ―――聖麗桜花女学校――― またの名を魔術師育成訓練所とでも言ったところだ。 一応は女子校として通じているが、真実は魔術師などが通う特別な学校。 その男はこの学校の理事長に就任した男だ。 いや……戻ってきたと言う言い方のが正しいのかもしれない。 二代目理事長(天瀬 澪都) 年齢は29。 主に使う魔術は生成魔術、実際に存在する美術品や武器を自分の魔力で作り出す投影にも似た能力である。 魔術師としては不完全な澪都だが、生成魔術だけで魔法使いの域に達した魔術協会お墨付きの魔術師である。 一度は辞任した澪都が再び理事長に就任したのは三代目理事長の春澪が寿退社したからだ。 内容については後々説明しよう。 まずは理事長室に行く事にする。 確か秘書が居るはずなので、面倒な事に巻き込まれる前に行きたいのだが……。 「Wyver(ウィヴァー)!!」 「あらら、どうにも……」 困惑するしかなかった。 目の前には二本足の翼竜、俗に言うなればワイバーンとも呼ばれる大型爬虫類の幻獣。 まさに幻想種とも呼ばれる伝説の飛竜を使役する女性が澪都の行方を阻んでいた。 「すぐにここから立ち去りなさい!!」 気品に満ちた容姿、太陽の光で輝く銀色の髪、全身を包んだ鎧、透き通った青い瞳、手には赤き西洋刀。 その姿からは勇ましささえ感じられた。 「そう言われても俺は四代目理事長として来たんだ。疑われる事には慣れているが、戦いになるのは嫌なんだよなぁ」 刹那、女性は雷の如く突進。 赤き西洋刀を横に一閃。 澪都の身体を真っ二つにするはずだったのだが、甲高い音を奏でて西洋刀の刃は、先程まではなかった長刀で受け止められていた。 「貴方は何者ですか!?」 「俺は《天瀬 澪都》聖麗桜花女学校の二代目にして春澪の寿退社で就任した四代目だよ!!」 女性は力を緩める事なく、澪都の瞳をジッと見つめる。 こちらも嘘を言っていないので、女性の瞳を見つめ返す。 十数秒程して、女性は力を緩めて澪都と距離を置いた。 「どうやら貴方の言葉に嘘はないようです。貴方の言葉を信じて道を開けましょう。私の後についてきてください」 刀を納め、踵を返した女性の後を澪都は無言で追った。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加