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「……んぁ?」
瞼を開くと知っている天井が飛び込んできた。
澪都が住んでいる家の敷地内にある道場の天井。
重く感じる身体を起こすと自分が着ている道着はボロボロ、周りは生成した武器が無造作に転がっていた。
「寝ちまってたのか?」
寝ぼけ眼で寝癖頭を掻きながら、ゆっくりと立ち上がった。
生成した宝具や神具は澪都が様々な情報から形へと変化させた神話に登場した物と遜色ない代物である。
道場の窓からは朝日が道場内を明るく照らして、熱を帯びて篭った空気を清々しく清めてくれる。
そして、修行の壮絶さを改めて確認させるように道場の至る所には鋭利で巨大な刀傷がいくつも残っていた。
その場で禅を組むと、魔力を巡らせ集中力を高めていく。
紡がれる言葉は澪都のたった一つの魔術。
生成魔術に特化した澪都だからこそ紡ぐ事が出来る詠唱。
『Leader_is_All_Members.』
《誰が誰を守り守られるか》
『Compass_Management.』
《誰にも聞こえぬ確かな号砲、愛しい貴方へ極上の鉛弾を》
『Cruel_Troopers_Revival_of_Destruction.』
《空を覆う鋼鉄の群れは雨粒を血の色に変える》
『The_Way_of_Light_and_Darkness_Parabolic_Antenna.』
《彼等のそれぞれの戦場には倒すべき敵、守るべき者》
「―――生成完了」
『Moonlight_neigh!』
《月夜の嘶き!》
―――己の魔力で作り出す大禁術であり、術者の心象世界、魔術師達はソレを固有結界と言う―――
目の前には鍔のない深紅の長刀。
澪都が担い手の妖刀『紅龍』
そして、失われた刀。
もう二度と戦わない、刀と言う刃を手にせずに戦いを止める。
妖刀を手にした犠牲はあまりにも近し存在。
今、澪都が手に持つ刀は『無銘』
幻想で作り出した刀、だが、その強度は業物にも匹敵する。
固有結界を解除すると、ボロボロになった道着を脱いだ。
身体には決して消えない傷がいくつも痛々しく残っていた。
身体に付いた汗を熱いシャワーで流すと、出勤の準備をする。
誰も居ない部屋。
誰の声もしない家。
孤独、その言葉が似合う家の玄関を出る時に……。
「いってきます」
決して返事の帰ってこない家に向かって言葉を紡ぎ、静かに玄関の扉を閉じた。
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