道場にて

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校舎の中は外から見るのと別次元だった。魔術師養成学校とは良く言ったものだ。 香るのは埃と湿気と血の香り。 久しぶりに感じる匂いは、決して気分が良いとは言えないが、懐かしいと言う気持ちを与えてくれる。 「あっ、あそこは……」 澪都が立ち止まった場所は、前に工房として使っていた教室。 この学校を春澪に任せる時に開かずの扉として封印してきた。故に中に入れる者は誰も居ない。 筈なのに……。 「扉が……開いてる?」 確かに封印した筈だ。 解除するには俺の認証と詠唱が必要になる。 神具アイギスの盾と同じレベルの扉が破壊されていた。 「―――っ!!」 急いで扉を開く。 無惨な空間だった。 教室の中は荒らされ、長年の知識と詠唱を書き写した禁術書が辺りに散乱して、真っ赤な鮮血が教室の中を朱に染めていた。 教室の隅にはネズミの死骸、魔法円の中心にはヒトでもケモノでもないナニかが倒れている。 「……………禁忌か」 ここにあるのは世界の魔術、その魔術書の中で禁術とされた物を書に記した。勿論、人を蘇生させる禁術も書かれてある。 だが、並の魔術師が扱える物はない。 無理に行えば……死が待っているだけだ。
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