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その日は、久しぶりのデートだった。
勤めている研究所の仕事をなんとか切り上げ、約一ヶ月ぶりの逢瀬に向かう。
私、佐藤由美は21歳。
彼は10歳以上も年上の、37歳。名前は…もう思い出したくない。
行きつけのバーで、失恋した私を、彼が慰めてくれたのが始まりだった。
「全てを忘れさせてあげる」
甘い言葉と共に、私達の恋は始まった。
付き合いと共に、私は結婚を意識するようになった。
だって彼は随分と年上で、少し遅いけれど、「結婚」が彼の人生のゴールになるはずだ。
彼の"恋"はこれで終わり、これから彼は"愛"に生きるのだ。
その最後の女に、私はなりたい。
そう言ったら彼は微笑んで、「いいね」と言ってくれた。
たった一言だったけれど、情事が終わったベッドの中でそう微笑まれて、私は有頂天になっていた。
――けれど。
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