現実の始まり

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自慢ではないが、私は小学校に入学して間もない頃から、「天才科学者」と呼ばれるようになった。 ここ日本でも、西暦2100年頃には飛び級制度ができていたから、私は12歳で大学を卒業し、今の研究所に入った。 学生の頃から特に、ヒューマノイド工学の分野に関しては、私の右に出るものはいなかった。 ヒューマノイド工学とは、簡単に言うと、死にたくない人間が生み出した科学の結晶だ。 歳をとって悪くなった部分を、どんどん付け替えていけるのだ。 100年くらい前に、IPS細胞から人間の一部を作れるかもしれないっていう研究があったでしょう。それが進歩したのがヒューマノイド工学だと思っていい。 この研究のおかげで、人間は脳以外ならいくらでも代わりがきくようになったから、人類の寿命は飛躍的に延びた。 歳をとりたくないとか、若いままでいたいとか言う人間は、シワが少しでも出たら皮膚を取り替えるものだから、少なくとも、見た目には高齢者の人口も減った。 私は8歳の頃にはもう、ケガをした猫の前脚を作ることに成功していたから、"天才少女"、"天才科学者"などともてはやされ、自然とこの道に進んだ。
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