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ここは町はずれの小さな港。
その港に一人たたずむ少女がいる。
マントを被り、右手にガラスの小瓶を握り締めた齢十四の女の子。
…この海には昔からある密かな言い伝えがある。
『願いを書いた羊皮紙を小瓶に入れて海に流せばいつの日か想いは実るでしょう』
たたずんでいる彼女の心の中にその言い伝えが蘇ってきた。
そして…記憶は少し昔へと戻される。
――――――――――――
数年前……
「はあ…はあ…はあ…」
「…王女っ!
待って下さい!」
港へと向かうその道で一人の女の子がガラスの小瓶を握り締めながら走っていく。
そして、女の子を追うのは女の子にそっくりな顔をした召使。
「…はあ…はあ…」
「…もう…王女?
さっそく試すんですか?」
「だって、あんなの聞いたらジッとしていられなかったんだもの!」
そう…彼女が聞いたというのは昔からある密かな言い伝え。
「…さすが王女と言うべきなんでしょうかね。」
「もうっ…」
そう言い王女はガラスの小瓶を見つめた。
「…何て書いたんですか?」
「…内緒。
言ったら叶わなくなっちゃうもん。」
それを聞いた召使はバッと王女から小瓶を奪い、海へと放り投げた。
「あーーーーっ!!
何してんの!?
君が投げたから君の願いになっちゃったじゃない!」
王女はびっくりしたと同時に召使を見た。
「…王女の願いは僕の願いだから。」
「え?」
「王女の幸せが僕の幸せなんですよ。」
「…………」
そう言われると王女は少し照れたように『お城に帰る』と、元来た道を歩き出した。
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