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黙れ。
と、その一言が声にならず空気のようにイスクドールの喉から口へと抜けていく。
頭の中で粘つき離れない光の玉の言葉。
身体はひどい倦怠感で指一本ですら動かせない。
闇の世界で、水に浮かびながら、その世界から逃れられない。
『――ねぇ、』
『――ねぇ、』
『――ねぇ、』
『――ねぇ、』
繰り返される質問。
答えられない質問。
光の玉が不意にイスクドールの耳の横に移動した。
一瞬の間、それの声が止む。
水を打ったような、妙な静けさが漆黒の世界を包む。
無言の緊張が威圧的で、イスクドールの呼吸を細くする。
『ねぇ』
光の玉が静寂を破り、吐息のような声で語り掛けてきた。
誰もいないのに、まるで誰にも聞かれないようにそっと小さな声で、光の玉がイスクドールの耳元で囁く。
『――――ねぇ、あの時お前が死ねばよかったのにね』
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