第2話 八神健太の長い1日

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「黙っておればさっきからメソメソと!! 鬱陶しいわ!!」 「ほあああああっ!?」  突如個室の扉が勢い良く開き、中からショートカットの活発そうな少女が出てくると、少女はズカズカと早苗に近寄って行く。 「あ、あのっ!? 私が見えるんですか!?」 「ぬ? 当然じゃろう?」  少女は早苗のすぐ傍で立ち止まると、不機嫌そうに腕を組みさらに続けた。 「おぬしのその泣きっ面も、声も聞こえておる! まったく……鬱陶しくて寝ておれんわ!」  ぎゃんぎゃんと怒鳴り散らす少女に気圧されたのか、ひたすらペコペコと頭を下げながら謝っていた早苗はある疑問を抱き、首を傾げながら少女を見つめた。 「ぬ? な、何じゃ? ワシに女色の気は無いぞ?」  少女は僅かに後退り、早苗と距離を取る。 「わ、私にもありません!! あなたは誰ですか!? どうして私が見えるんですか!?」  顔を真っ赤にして叫ぶ早苗の声を、煩わしそうに耳を塞いでやり過ごした少女は、腕を組み直すと溜め息混じりに言った。 「ワシが誰か? じゃと? ワシもそこそこ名が売れたと思っておったんじゃがな……」  早苗は全くわからないといった表情で更に首を捻る。
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