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早苗のその様子に少女はガックリと肩を落とし、俯き気味に口を開いた。
「ワシは花子じゃ……」
「花子? もしかして……『はーなこさん、遊びましょ』の花子さん?」
「おお、そうじゃ! 何じゃ、知っておるではないか!」
自分の事が知られていて嬉しかったのか、花子と名乗った少女は明るい表情で顔を上げた。……が、今度は花子が首を傾げる番だった。
「……何じゃ? 変な顔をしおって」
何故なら早苗がぽかんと口を開けて自分を見ているのに気付いたからだ。
「ほあああああっ!? おばっお化けーーーっ!!」
「おぬしもじゃろうがぁぁぁぁっ!!」
きゃあきゃあと悲鳴をあげながらトイレ内を逃げ回る早苗と、フシャーッ! と猫の様に威嚇しながらそれを追いかけ回す花子。
普通の人間には見えない、幽霊同士の追いかけっこが始まった。
それに伴い、バッタンバッタンとトイレ中の個室の扉が開閉を繰り返す。
そんな事が起こっているとは知らずサボった授業の時間を潰す為にトイレに来た女子生徒によって、金楠高校の怪談話が一つ増えたのは、当の本人達は知る由もなかった。
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