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「健太くんは人気者なんですねぇ」
必死に走る健太の横を涼しい顔で飛びながら、にこやかにそう言った早苗。
彼女の目には、健太が追われているこの状況がそう映るらしい。
(違うっ!! つーか間違ってもあんな奴らの人気者にゃなりたくねえ!!)
追いかけてくるのは、タンクトップ姿の柔道部員達を筆頭に血走った目の男達。
事情のわからない生徒達にすれば、いい迷惑である。
「ダメですよー。お友達をそんな風に言っちゃ。それに妻としても夫がお友達に慕われるのは嬉しいです。……まあ、女の子が追ってきてたら……」
そこで言葉を切り、ニタァっと笑う早苗。
一体女の子だったらどうするつもりなのか、聞けない、いや、むしろ聞きたくない。
「ほほう。おぬし達、そういう関係か?」
早苗の隣を飛んでいる花子が意外そうに二人を見ている。早苗は「家は一軒家でー……」等と顔を赤くしながら将来の夢を話しているが、健太は違った。
(……こんな時にアレだが、あんた誰?)
彼女が人間では無いことはわかっている。
むしろ人間が生身で空を飛べたらびっくりだ。
黙って自分を見つめる健太を、花子は眉間にシワを寄せながら見返したあと、何かに気付いたのか顔を赤くして慌てふためいた。
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