第2話 八神健太の長い1日

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 踊場で転びそうになるのを必死にこらえ、一階の廊下に足を着けると、すぐさま左に向かった走り出す。 ――目指すは職員室。 (早苗! 追っ手は!?) 「へ? 皆さん着いて来てますけど?」  それを聞いて健太はほくそ笑んだ。 ある言葉を借りるなら、‘計画通り’といった所か。  職員室まであと約十メートル。  だがここで健太にとって不測の事態が起こる。 前方から新田が現れたのだ。 完全な誤算だった。 ハンター達は全員、自分の後を追っていると思っていたから。  職員室まで残り約五メートル。 今更止まれない。  健太に気付いた新田も走り出す。 「健太ぁぁぁぁぁっ!! 往生せいやぁぁぁぁぁっ!!」  新田の叫びに呼応するかの様に、他のハンター達も雄叫びを上げる。 「唸れ筋肉! 我が肉体美を目に焼き付け逝くがいい!!」  タンクトップを掴み、真ん中から一気に引き裂く柔道部員。 マッチョがシャツを破る時、それは封印が解かれた事を意味する。と誰かが言っていた気がする。  新田は自分達の勝ちだ、そう確信していた。 前後を挟まれた健太に逃げ場はない、と。 しかし、その顔はすぐに困惑の表情を浮かべる事になる。  あろうことか健太が職員室に駆け込んだのだ。 そしてそのまま新田は、健太を追っていた柔道部員と正面衝突。  新田和義(にった かずよし)。 彼のファーストキスは血の味だった。
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