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健太は教師達の視線を一身に集めていた。
当然だ。入室の挨拶もせず、慌ただしく突然現れたのだから。
何事かと怪訝な表情の教師達に、にへらっと愛想笑いを浮かべると、健太はそのままそそくさと向かい側にある中庭に続く出入り口へと向かう。
中庭を横切り二年の教室や化学室等がある校舎に隠れるのが目的だった。
もっとも、当初の逃走計画から多少のずれはあるのだが。
それでもハンター達からは逃げ切れそうなので、結果オーライといった所か。
「お前達! 何をやっとるかぁ!?」
不意に廊下から聞こえた男性の怒号。
恐らくはハンター達に対して上げられたのだろう。
教師達の視線が自分から外れたのを感じた健太は、一気に職員室を駆け抜ける。
自分を呼ぶ教師の声を無視して、中庭を突っ切り校舎へと駆け込むと、扉の陰に身を潜め安堵の息を吐く。
(さすがにこっちにゃ居ないみたいだな……)
「あのぉー……健太くん?」
(んー……?)
躊躇いがちな早苗の声が気になって顔を上げると、健太にもその理由がすぐにわかった。
注目の的。
それが今の健太にお似合いの言葉だろう。
たまたま廊下に居た者達全員から見られていた。
こほんっと小さく咳払いしたあと、逃げる様にその場を離れた健太だった。
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