14人が本棚に入れています
本棚に追加
(ここなら大丈夫だろう……)
校舎の二階にある図書室に健太は隠れていた。
普段漫画しか読まない健太には無縁なこの場所に隠れているとは、新田達も思わないだろう。
とはいえ入り口付近にただ突っ立っているだけじゃ他の利用者達に迷惑だろうし、何より目立つ。
健太は本を探している振りをしながら書架の間を通り、誰も居ない一角に座り込んだ。もちろん読みもしない適当に選んだ本を持って。
(さて、さっきも聞いたけどあんた誰?)
頭の中で花子にそう言いながら視線を向けるが
「さっきから何なんじゃ!? 言いたい事があるならはっきり言わぬか!」
まったく伝わっておらず、健太は首を傾げる。
(……早苗、俺の声聞こえてる?)
「え? ちゃんと聞こえてますよ?」
(だよな? じゃあ何でコイツには聞こえないんだ?)
「あ、それはですねえ」
「ええい! ワシ抜きで話すでない!」
早苗の説明を遮り癇癪を起こした花子は、健太の手から本を引ったくるとそれを頭に落下させる。
それほど厚みがなかったのがせめてもの救いか。
花子の行為にちょっとムッとしながら早苗は健太の横に腰を下ろすと、本が当たった所を優しく撫でながら再び口を開いた。
最初のコメントを投稿しよう!