第3話 父、帰る

2/14
前へ
/46ページ
次へ
「ただいまー」  帰宅した健太が靴を脱いでいると、奥からトテトテとこちらに近づいて来る足音と共に 「おにぃー! おかえりー!」 茜の声が聞こえてきた。 「おかえり。遅かったね」  それに続く美月が固まった。 当然と言えば当然だ。 健太に憑いてる幽霊が一人増えているのだから。  健太が口を開こうとした瞬間だった。 突然健太の視界が何かに塞がれ、すぐさまこめかみを締め付ける様な激痛が走る。 「健太……説明してくれる?」 「わかった! わかったからまずはアイアンクローを止めてお母様!!」  健太から見える美月の表情は笑顔。 笑顔には違いないのだが、目がまったく笑っていない。 僅かに締めつける力は緩んだものの、手は未だに健太の顔を掴んだままだ。  早苗はオロオロしながら健太と美月の周りを飛び回り、花子は我関せずと言った具合に欠伸、茜は「ママがんばれー」と何故か応援中。 「えーと、彼女はトイレの花子さん。何か知らんけど早苗と友達になったらしくて、その後俺に取り憑きました!!」  顔に笑みを浮かべたまま花子に視線を向ける美月。 花子も花子で挑戦的な目で見詰め返す。 「アンタ、まだ居たの?」 「当たり前じゃ。おぬしの様な小娘にワシが祓えると思うたか?」
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加