第3話 父、帰る

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 花子が健太の耳元から離れると、健太はニィッと口角を釣り上げ 「クククッ……越後屋、お主も悪よのぅ」 「いえいえ、お代官様程では……」  と、二人が時代劇の悪役じみた会話をしていた、その頃。 「ほあああ……」  一階では次々と食卓に並べられていく料理を前に、早苗が目を輝かせていた。 「お義母様、今日は何か良い事でもあったんですか?」  健太の帰宅時とは打って変わって、鼻歌混じりでなにやらご機嫌な美月。 「ん? ようやくダンナが帰ってくるんだ」  まるで恋する乙女の様に満面の笑みでそう返す。 「パパかえってくるの!?」  茜も読んでいた絵本から顔を上げ、目を輝かせる。 「ようやく……って、お義父様どこに行かれてたんですか?」  早苗が健太に取り憑いて数日、父親の姿が見えない事を不思議に思ってはいたが、父親の話題が挙がる事は一度もなかった。 早苗も聞いてはいけないのだろうと、その話題には触れなかったのだが。 「あれ? 健太から聞いてない?」  美月の口調から察するに、重い話題では無い様だ。 「ダンナはね、入院してたんだ」 「入院……ですか?」  揃って首を傾げる早苗と茜。 そんな二人を見ながら、美月はクスクスと笑いながら言葉を継ぐ。 「そ。へそからキノコが生えてくる病気になっちゃってね」 「どんな奇病ですかそれ!?」
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