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美月と花子の間に緊迫した空気が流れる。
健太はリモコンを操作したそのままの姿勢で固まり、早苗はいつでも脱出出来る様に天井近くで待機。
花子は相変わらず健太の背におぶさったままなのだが、その形相はまさに鬼。
健太にしてみれば爆弾を背負っているにも等しいこの状況。
助けてくれとばかりに早苗に視線を送るが、ぶんぶんと激しく首を横に振る。
「ババア……じゃと? 小娘……そういうおぬしこそ、シワが増えたのではないか?」
本人も気にしていたのか、美月の持っていたコップにヒビが入った。
その言葉を最後に誰一人口を開く事無く、時計の音だけがリビングにこだまする。
一触即発の空気の中延々続くかと思われたこの時間は、彼によって唐突に終わりを迎えた。
一家の大黒柱、八神 総一郎(やがみ そういちろう)の帰宅だ。
「ただいまー……って美月どうしたんだ? そんなに怖い顔して」
健太達にとってはまさに救世主とでも言うべきだろうか。
「お父様ーーーっ!!」
ソファーを乗り越え総一郎の足にすがりつく健太。
「パパーーーっ!!」
その健太の背中を踏み台にして、茜が腹部に飛びつくと、バランスを崩し転倒する総一郎。
その様子を美月達は茫然と見ていた。
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