Prologue『lost』

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その場所は闇だった。 光の届かない部屋。 その中にある椅子に一人の男が座っていた。 彼は金色の瞳を闇の中で光らせ、ゆっくりと立ち上がり、机の上に置いてあった本を持つ。 すると、従者らしき一人の男が扉を開けて部屋の中へと入ってきた。 「本当にこのようなことをなさるおつもりなのですか?」 従者が主人である男に問う。その声は恐怖のせいか微かに震えていた。 彼は男の完全に異質な雰囲気や圧倒的なプレッシャー、そして全てを統べるかのような鋭い金色の眼光に怯えているのだ。 すると、男は本のページを捲って目的のページを開くと、これだ。と小さく呟いた。そして、従者の方をギロリと睨みつけた。 「勿論だ。そのために何度もこの世界で『実験』しただろう?」 「そ、それはそうですが、その呪術では強大な力を持つ者に効果がありませんが……」 「くくっ……そうか……だが、そちらの方が都合がいい」 男は妖しい笑みを浮かべ、床の呪術陣に手を置いた。 そして、男が何かを呟くと、呪術陣から白い光が出てきた。 「どうしてでしょうか?」 「ただ争うのを見てるだけじゃつまらないだろう?だから、この『全繋断(オールコネクトカット)』を利用して強い奴に潰し合いをさせようという寸法だ。しかも、この世界、『エターナ』には時が存在しない。強い奴が時代も関係なく集まってくる……フッ……面白い暇つぶしになりそうだ……」 男は光り輝く魔法陣の中心で手を大きく広げた。 すると、魔法陣の光がさらに強くなり、部屋を銀色に照らす。 「クククッ……さあ、始めよう!戦いという名のゲームを!」 男がそう言って高らかに笑うと、世界がまばゆい光に包まれた。 そして、その光が世界に大きな変化をもたらすことをまだ二人以外誰も知るよしはなかった……
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