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午前4時。
妹は、突然我が家から出ていった。
原因は、兄である私にあった。
それは、昨晩の話だ。
「私、絶対にあの方と結婚するから。
お兄様が反対しても、私は決めているの。
私、あの方と暮らしたい。
これからの人生は、あの方と一緒に歩んでいきたいの。」
「ふざけるな。
俺は絶対に許さないぞ。
お市、お前は俺が決めた相手と結婚するんだ。」
「そんなの嫌。
私は、自分で決めた相手と結婚したいの。
私にはあの方以外は考えられない…。
いくらお兄様だろうと、それだけは私は譲れないの。」
「どうしてなんだ?
あんなやつの何がいいんだ?
俺には全く理解できない。
なぜならば、アイツはに……。」
「それ以上は言わないで…。
それ以上言ったら、私…、出ていくから……。」
「あぁ、そうか。
じゃあ、出ていけばいい。
その代わり、一度出ていったら、二度とこの家の敷居(しきい)は跨が(またが)せないからな。
お前にそれだけの覚悟があるのか?
リストラに遭い、毎日、テイッシュ配りのお姉さんからもらったティッシュを、家の前で売りながら生計を立てようとしている父。
5年前から編み出したセーターを、未だに編み続けている母。
出会い系サイトで知り合った19歳の女の子に、貯蓄(ちょちく)の全てをもっていかれてしまった祖父。
76歳にして、夜な夜なクラブで遊び続ける祖母。
両親が50歳を過ぎて作った、可愛い弟の吉秀(よしひで)。
そして、お前が可愛がっている、自分自身のことを犬だと思いこんでいる猫の何とかかんとかという名前のやつ。
お前にとって、家族とは何ものにも代えられない程大切な存在だろ?
その家族に、お前は今後一生会えなくなるんだぞ。
それでもいいのか?」
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