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「玲奈ちゃん、こっちの方にホントにあるの?…バス。」
徹志は少しだけ不審に思いながら、玲奈に聞いた。
「そうですよぉ。会社がこっちに在るんですよぉ!あ、ほら見えた!あれだよ!」
玲奈が指差した先には、円山観光と書かれた看板と、年季の入ってそうなマイクロバスが数台停まっていた。
その中の一台は、エンジンがかかり、数人の客が乗っていた。
「へぇー何かロケバスみたいだねー。」
(スゲェ小さい観光会社だなぁ…。田舎だからこんなもんかぁ…。)
徹志がバスを見てそう言っていると、もう出発するから乗ってと玲奈が即した。
慌ただしくバスに乗り込み玲奈を見ると、叔父さんとおぼしき大柄な男と話していた。
男はチラリとバスを見ると、徹志と目が合い、ニコリと笑って近づいてきた。
男はバスに乗り込み、車内を見渡すと人数を確認し、挨拶を始めた。
「えー、本日は円山観光をご利用頂き、誠にありがとうございます。こちらに菓子や飲み物がありますので、ご自由にお食べ下さい。間もなく、発車致しますので、お座りのままお待ちください。」
野太く張りのある声は、何か安心感を与えてくれた。
チラリと玲奈を見ると、ニッコリ微笑んで手を振っていた。
徹志は、微笑み返すと軽く手を振った。
「それでは、出発致します。」扉がしまり、一回クラクションを鳴らすとバスは走り出した。
目的地は札幌と表示してあった。
バスを見送る玲奈は、バスが見えなくなると、冷酷な笑みを浮かべた。
「フフ…任務完了……。」
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