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ピピピピ…ピピピピ…ピピピピ…
朝を告げる目覚ましがなり、カーテンの隙間から朝日が顔を覗かせている。
「うぁ~あ…あぁ…」
右手を伸ばし、目覚ましを探し当て止める青年。
寝惚け眼でムクリと起き上がり、カーテンを開けグッと一伸びをして気合いを入れる青年。
「よしっ!支度すっかぁ」
青年は、そういうと洗面所に向かい顔を洗った。
その音で目を覚まし、ムクリと起き出して、シーツを纏いながら洗面所へ向かう影。
「…おはよぉ」
そう言って青年に声をかけたのは、青年の彼女である。
壁に寄りかかり、眠い目を擦る彼女は、あどけなさが少し残る可愛らしい顔をしている。
「伊織、もう起きたのか?まだ寝てていーんだよ。」
青年は、タオルで顔を拭きながらそう言って伊織に近づいた。
「…うん。でも、今日はてっちゃんが出発する日でしょ。少しでも顔見てたいから。」
そう言って伊織は徹志に抱き付いた。
徹志はそんな伊織をいとおしく抱きしめ、頭を数回ポンポンした。
今日は徹志が長年計画していた、日本縦断の旅にでる日であった。
手始めに北海道を周り、本州、四国、九州、沖縄と廻るつもりである。
日数を特に決めていない流浪旅でもあった。
伊織は、次にいつ会えるかわからない事から、内心は行って欲しくない気持ちで一杯だった。
しかし、前々から楽しそうに話す徹志を気持ち良く送り出そうと、前の晩から泊まりに来ていたのである。
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