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「忘れ物は…無いな!まぁあってもいいか!」
徹志は一通り部屋を見渡し、大きなキャリーを引き家を後にした。
「あ、待って!忘れ物!」家を出てすぐに、伊織が忘れ物と言い取ってくると戻って行った。
数分後、息を切らせながら伊織が徹志の元に駆け寄った。
「何忘れたの?大事なもの?」
徹志が伊織に聞いた。
「へへっ!はい!コレ御守り。」
伊織は手作りのチョーカーを徹志に差し出した。
革紐で作ったそれには、勾玉と指輪が括り着けてある簡単なモノだった。
「コレ…伊織が造ったのか?」
徹志は嬉しさと驚きで早速首からさげた。
「そうだよ!ちゃんと願掛けして造ったから大事にしてよね!」
伊織は無邪気に言うと、徹志は満面の笑みで答えた。
早めに家を出て駅に着いた二人は、カフェで朝ごはんを食べていた。
伊織は笑顔を作っていたが、やはり寂しい気持ちを隠すことが出来なかった。
それを察した徹志は、前から考えていたことを伝えた。
「なぁ伊織、もし良かったらさ、北海道から東京に戻ってきて、その後南に下るじゃん?そしたらそっから一緒に行かないか?伊織と行きたいとこがあるんだ。」
徹志は、その際に伊織にプロポーズしようと考えていた。
「え?でも、てっちゃん1人で日本縦断するって…。」
伊織は少し戸惑いながら問いかけた。
「ん?あぁ、良いんだ。南の方に一緒に行きたい場所があってさ。行ってくれるよな?」
「てっちゃんが良いなら行く!…でも行きたいとこって?」
伊織は嬉しそうに、でもその場所が気になって聞いた。
「それは行くまでのお楽しみだよ!今言っちゃったら楽しさ減るだろ?だからダーメ。」
徹志は意地悪に笑い、伊織に言った。でもその顔はとても幸せに満ちていた。
「あ、てっちゃん、そろそろ時間だよ!」
伊織にそう言われると、時計を見て足早に会計を済ませ、駅に向かった。
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