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そのくせためらいながら、彼のしなやかな指の爪が秘所を掻(か)いた瞬間、稲妻がはしったかのように私の背骨が反って足がつり、汗ばんだ下腹が収縮しました。体液は歓喜に沸き立ち、血管は自分の意思でのたうって頭をもたげ、屈強な装甲と立派な革の装飾の隙間を目指して伸びていきます。
ひるんだのは彼のほうで、私は対等だと思いました。
私の貪欲な赤色縅(おどし)は鎧の下を縫って這(は)い、彼の素肌に刻まれた歴戦の証をつき破った手ごたえを感じると、むき出しの心臓がふくらんで新鮮な血をわかち合おうとします。彼が喘(あえ)いで、潮の香りがしました。震える彼の肩を私はすかさず支えようとした瞬間、重々しい影がとぐろを巻いて再び猛り、彼は私を乱暴に払いのけると「なぜ」と言いかけた口を強く掴みました。
押さえつけられた唇が痛みます。何も知らない馬鹿な奴だと、きっといまいましく思ったのでしょう。けれどそれよりも私は、熱いはずの彼の手が、本当はひどく冷えていたことのほうが衝撃で、辛いのでした。ぱっくりと開いたまま放り出された体は、まだてらてらとしています。
触れさせてもくれず、もう触れないつもりなら、また閉じてしまえばすむことです。仰向けの私はただ前を見ていました。涙が流れていたかどうかわかりません。彼は私を覗き込み、瞳の澄んだ青白い光に長い睫毛(まつげ)を落として、さようならを告げた気がしました。けれども同時に彼は私の両耳を引きちぎったので聞こえません。
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