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♠わがままな女♠
今日、おばあちゃんの入院してる病院に行った。
寝たきりで、元気な時の面影もない。
足の裏が痒いと言うので薬を塗りながら、しばらく足を摩った。
特に喜んでる様子もないけど、また歩けるようにと、こっそり願いを込めた。
『そんなんより、爪が…』言いにくそうに語尾を濁す。
手の爪が伸びているのが気になるらしい。
少しでも軟らかくなるように手をお湯で温めながら、爪を切る準備をしている私に言い訳がましく呟く。
『看護婦さんに言ったら、仕事に入ってないからダメだって言われた』
湯につけた効果も無いくらい硬い爪を、丁寧に切った。
おばあちゃんは、短くなった爪を見ながら何度も言った。
『看護婦さんに言ったら、仕事に入ってないからダメって言われて…』
弱るしかない小さな身体
もう、食べることも歩くことも出来ない
ただ、痛みに耐え
ただ、時のくるのを待っている
楽にしてやりたいと思う半面
失う恐さが私をわがままにさせる
まだ足りない
爪を切るだけじゃ、足を摩るだけじゃ…全然足りない
わがままな私は
毎日通う素直さも無いくせに
まだ苦しんでくれと、願うことを
ヤメラレナイ
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