序章

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「死んでしまいたい…」 そう呟いて少女は 空を見上げた 月が綺麗な夜だった 少女は屋上に立っていた 目の前のフェンスに手をかけた、そのときだった 『ばっかじゃねぇの』 自分の頭上から聞こえたその声に少女は顔を上げた 『何簡単に死にてぇとか、言ってんだよ』 言葉使いこそ汚いが とても美しい少女だった 漆黒の長い髪 そして真紅の瞳は 濃紺の夜空に浮かんで見え まるで一枚の絵のようだった 少女は一瞬にして彼女に魅せられてしまったが しかしすぐに我に返り 「簡単なんかじゃない!!」 『嘘だね、よく考えたこともねぇくせに』 「そんなことない…ずっと苦しくて、もう堪えられないのよ!!」 『お前が死んだって何も変わんねぇんだよ、しばらくすればお前の存在なんて誰も思い出さなくなんだよ』 「…だって」 『いいのかよ、そんなんで』 少女は黙ってしまった 『負けっぱなしでいいのかって聞いてんだよ』 「でも…」 少女は唇を噛んだ 『でもじゃねぇ、つーかお前に拒否権無し、全部俺が決めっから』 開いた口がふさがらない とはこのことだろう 自分で聞いておいてなんて理不尽なんでしょう 『死んだら負けだかんな、そんなの俺がぜってぇに許さねぇ』 「そんなこと言われても」 『戦ってみろよ、足掻いてみろよ、何もしねぇで負けんじゃねぇよ』 彼女は退屈そうなため息をついて言った 『めんどくせぇが、俺達がお前を助けてやんよ』 その言葉に少女は ほんの少しだが 救われるような気がした _
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