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ベキンッ!!
突然、俺の真上から何かが壊れる音がした。俺は一瞬、驚いて目を閉じてしまったが、目を開けて音が発生した場所を確認する。
音が発生した上の方を見る、どうやらアパートの屋根が壊れたらしい。人一人分が通れる程の穴が空いている。匠のおかげで部屋の中から夜空が見えるという素晴らしいプラネタリウムが出来上がりました。
まぁ、ふざけてる場合じゃねぇな。俺はポケットから携帯を取り出そうとしたが小さな異変に気付いた。
あれ?さっきまで持ってた箸と卵かけご飯どこいった?俺は部屋中を見回したが、箸と卵かけご飯は神隠しの様に消えてしまった。
不思議な出来事に首を傾げながらも、今度こそ俺はポケットから携帯を取り出した。
この時間だと、もうすぐ母さんが帰ってくるな。天井に穴が空いちまったから一応、連絡入れとくか…。
俺は携帯の電話帳から母さんの番号を入力する。
母さんは、以外にも早く電話に出る。
『もしもし?』
「あ、母さん?あのさ、なんか屋根に穴が空いちまってさ…」
『え!?穴!!』
電話越しでも分かる程、母さんは驚いていた。
「うん、穴。とりあえず、修理屋とか呼んだ方がいい?」
俺がそう電話で聞くと、母さんは声を張る。
『駄目!もしかしたら簡単に直せるかもしれないでしょ!!』
「あぁ…そうだねー(棒読み)」
そういえば、母さんは呆れる程にケチだったな…。
『とにかく!お母さんが帰るまでそこにいなさい!!いい!?』
母さんは俺の返事を聞かず一方的に電話を切った。
ケチ過ぎる。大阪のおばちゃん並にケチ過ぎる。俺は溜め息を吐き、携帯をポケットに仕舞おうとしたが無理だった。
それは何故かって?
理由は携帯が飛んで行ったんだ。
よく意味が解らない?俺もわかんねぇよ。
だってさぁ…
俺の目の前で携帯が上へ、上へと飛んでってんだぜ?夜空の彼方まで飛んでったんだぜ?俺の携帯が…。
俺は買い換えたばかりの携帯が俺の手からどこかへ離れて行くショックよりも、この不思議でありえない現象への驚きという感情の方が大きかった。
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