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 ちょうど僕がリトルリーグに入った時もこんな感じだったのだろう。  その時の感動はこの歳になってもはっきりと憶えている。  今から思えば、死んだ当時の父の年齢を二歳ばかり超えて、今ようやくその思いを受け取った様な気がする。  父は、一人っ子で友達も少なかった僕に対して、積極的に休みの日になるとキャッチボールをしようと声を掛けてきてくれた。  それでも父よりも友人と遊ぶ事を選んだ。  今から思えば、あの時父とキャッチボールをやっておけばよかった……  父は僕が小学校三年生の時に死んだ。  どうやって死んだのかも幼かった僕には正確に知るすべも無く、実際に知っているのは後から知らされた母や親戚からの話だけだ。  正直言って、息子である僕に対して一生懸命父親であろうとしてくれていたらしい記憶しかない。  それすらも罷り《まがり》なりにも一人の子の父となってから、僕の中で勝手に作り上げられた虚像なのかも知れない。 「パパこれー」  志朗が待ち切れないとばかりにグローブを、最近少々出てきた僕の腹の上に投げて寄越した。  僕は隣でまったく動じない妻を起こさないように小声で『待ってろよ』と答えると、動きやすいようにスウェットの上下に着替え、昨日のうちに準備しておいた少々カビ臭いグローブを抱えて、息子の後に着いて行った。
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