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暫くのドライブの後に着いたのは誰も居ない冬の海だった。
「久し振りだな、ここ。」
車を降りて伸びをしながらユチョンが呟く。
最初にここに来たのはもう何年前だろうか?
まだ僕は子供で
あの時隣に居たユチョンがやけに大人に見えたっけ。
「初めてここに来た時は…そうそう、チャミが失恋した時だったな?」
車越しにユチョンが意味深な笑顔を向けてくる。
「もう昔の話です。行きますよ。」
軽くユチョンを睨んで歩き出す。
ふっと背中で笑い声が聞こえて足音が着いてきた。
駐車場から少し歩いて砂浜に降りる階段の途中に腰を下ろせば
優しい温もりが寄り添うように僕の隣に腰を下ろした。
失恋して泣いたのも
仕事で行き詰まって悩んで逃げ出したのも
付き合ってと告白されたのも
初めてキスしたのも
いつもこの海だった。
“ユチョンの秘密の場所”
から
“2人の想い出の場所”
になるのに時間は掛からなかった。
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