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 僕はソファに腰掛け、大型画面にリモコンを向け、電源を入れる。  土曜日の夕方。子供向けのバラエティ番組が流れていて、ぼんやりと画面を観ていた。新人のぽっと出の芸人が数人の子供タレントに媚びたようなネタを提供していた。  子供は誰ひとり笑っていない。もうひとりのアイドルくずれのタレントが、フォローする姿が痛々しい。  そんな姿を観ながら、僕は爆笑していた。そうそう、子供は大人の計算通りにはならないんだ。簡単にすら笑わないことを示した子供たちに乾杯!  アイスキャンディーの棒を、僕はふりまわしていた。  その動きにあわせるように軋むソファー。くたびれたスプリングが悲鳴をあげる。  もう、僕くらいしか座らないソファー。  台所でなにやら料理を作る母の叩くまな板の音が、一定のリズムをきざむ。  ジャーっとなにかを炒める音が聞こえ、良い香りがリビングに忍び込んできた。僕のお腹は、ぐぅ、といった。
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