9人が本棚に入れています
本棚に追加
おもむろに時計を見た母は、自分の作った料理を口に運びながら、僕に向かって言う。
「いいかげん、家に戻ってきて、もう数ヶ月経つんだから、そろそろ働いてもらわないと困るんだから。タケルは、そういうとこがルーズすぎるの」
「ああ。ちゃんとやるからさ。もう少しだけ待ってよ。仕事は探してるんだ。ハローワークにも行ってるし、ジョブサイトにも登録してる。不景気でも求人がないわけじゃない。だいじょうぶ」
僕がそう言うと、母はじっとりとした目を向ける。
「だいじょうぶって言ったって、大学も辞めちゃったようなあんたに、仕事があるのかしらね」
僕は負けじと反論する。箸を持つ手が少し、汗ばんできた。
「もう学歴社会の時代は終わる。スキルだよ、スキル。きっとどうにかなるから」
「あのね、最初の判断材料は履歴書で、そこに書かれてることが判断基準なの。中退は高卒。これは変わらない」
最初のコメントを投稿しよう!