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超がつく高級ホテルのスイートルーム。
もちろん、ベッドはキングサイズで、スプリングもいい感じ。
こんな部屋に一度でいいから泊まってみたかったんだよね。
「ほら、怒らないから言って御覧。君は何をしようとしてたのかな?」
普通にさ……
今まさに、ベッドに仰向けに転がされ、腹の上に男が馬乗りになってて、眉間にはピッタリと銃口が宛てられている。
「……あんたがシャワー使ってる間に……財布抜き取ってトンズラするつもりだった」
正直に言うと、とりあえず銃はしまってくれた。
「なるほどね……オレをカモろうとしたわけか」
「そうだよ」
「残念だったな。上手く行かなくて」
こいつ、街で声掛けた時と全然雰囲気が違う。
街に居た時は、隙だらけでカモって下さいと言わんばかりだったのに。
なのに今は獲物に狙いを定めたタカとかワシとかの猛禽類みたいだ。
「あんた何者? 普通のサラリーマンじゃないよな?」
「普通のサラリーマンは銃なんて持たないものな」
「さっきと雰囲気全然違うし」
「仕事中だからだよ」
「仕事?」
「オレを狙ってる奴をおびき出そうとしてた……で、君が近づいてきたから、『こいつが?』とは思ったけど、のったふりをした」
「……殺し屋なんがじゃねえし……」
「そうみたいだな」
納得してんならどいて欲しい。
「君はいつもこんなことを?」
「こんなって?」
「こんな恰好で、金持ってそうな男を誘惑して、財布を持ち逃げしてるのか?」
具体的にいってくれやがりますね……
「女の時もあるよ……でも男の方が騙しやすい。やることしか考えてねえんだもん」
大概の男は、色目をつかって誘えばのってくる。
ハゲ親父なんて特にだ。
眼前の男は、ハゲでもデブでもない。
好みの顔なんだよな。
カモってオーラもあったけど、ダメもとで声かけただけで、まさかこんな事になるとは思わねえだろ、普通。
「カッコはまちまちだよ。こういう娼婦っぽいときもあれば、どっかの令嬢みたいなカッコする時もある」
「ほう……」
「信じてねえだろ」
「さてね」
「証明してやっから、ちょっとどけよ」
「……」
興味があるのか、男はすんなりと上からどいた。
今の服は、深いスリットのはいったセクシーな深紅のドレス。
化粧も濃いめで、髪もアップにしてる。
俗に言う、オミズ系なカッコ。
起き上がり髪を解き、手櫛で整えて結う。
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