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「手品師のおじさん」
「なあに」
今度はおじさんでも怒らない。
「私を、消してよ」
手品師はすぅっと目を細めた。
実は初めて、私の顔をちゃんと見たような様子だった。
私はポケットをあさった。
「これ、」
「ん?」
私が手品師の手に落としたのは、なけなしのお金と、一対の小さい銀色のピアス。
「これは?」
「おだい。これの代わりに、私を消して」
また手品師がすぅっと目を細めた。
よくみるとその仕草が、昔うちで飼っていた黒い犬にそっくりだった。
「よろしい」
手品師は手のなかでコインとピアスをしゃらん、と鳴らした。
「でもその前に」
寒いだろ。手品師が、私の肩に、ふわっとマントをかけてくれた。
「魂のおはなしを、しようか」
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