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そして、りゅうの謹慎が解かれた今日。りゅうの方から、俺のところに来た。
「せんぱ―い!」
朝から大きな声で俺を呼ぶりゅう。振り返ると、りゅうはがばりと俺に抱きついた。
「先輩だ先輩だ先輩だ!!お久しぶりです、先輩。お腹空いちゃいました」
ただいまの時刻は、朝の八時。授業すら始まっていないはずなのだ。
俺はなんとかりゅうを引き離し、ため息交じりに注意をした。
「いい、りゅう。いくら久しぶりだからって、いきなり人に抱きつかないこと。それから、お腹空くなら、ちゃんとご飯食べてこなきゃ」
「……はーい。でも先輩、朝ご飯食べてもお腹空いちゃった場合はどうすればいいですか」
どうやら食べては来ていたらしい。仕方が無いので、多めに作ってきたりゅう用のお弁当からサンドイッチを差し出した。
「はい。今はこれだけで我慢してね」
「ふぁーい」
食べながら返事をするりゅう。それを呆れながらも見ている俺。さながら、動物への餌付けの様子である。
なんか俺、どんどんりゅうの扱いが雑になってきているような……。
サンドイッチ一つを食べ終え、パンかすを払ったりゅうは言った。
「よし。腹ごしらえもしたし、あいつのところ行きましょうか」
まさかりゅうからそう言われるとは思っていなかったので、少しだけ驚く。けど、すぐに頷いた。
隣の教室をそっと覗くと、窓際でクラスメイトと談笑している麗の姿があった。けど、その顔はどこか元気が無い。俺が首を傾げていると、すぐ脇の扉からりゅうが、スパンっといい音を立てて教室の中に入って行った。
驚く俺と教室にいる生徒たち。りゅうはそんな事気にせず、つかつかと麗に近づいた。
「……何?」
「いえ、ちょっと話があるんで、外出てもらえます?」
すごくいい笑顔で外を指すりゅう。喧嘩をうっているように見えたのか、麗のクラスメイトの何人かが殺気だった。
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