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麗に謝罪しに行ったその日に、動きがあった。
いつものように、屋上で昼食を食べていると、俺の携帯が鳴った。メールのようだ。
何気なくディスプレイを見ると、表示されたのは、電話帳に登録されていないアドレス。
「……へ?」
見た瞬間、このアドレスが誰のアドレスか分かってしまった。これは、麗のだ。
別れたその日のうちに、俺は麗のアドレスを消した。未練たらしく残しているのは嫌だった。何より麗に迷惑かと考えたからだ。まさか、その本人から来るとは思わなかったが。
なかなか出ない俺に、りゅうが首を傾げて、俺の顔を覗き込む。俺は意を決して、メールを開いた。
「二人きりで話がしたい
いつなら会える?」
簡素なメール。麗らしいメールだ。
内容から、誰かを判断したのだろう。りゅうの表情が一気に険しいものになった。
「……どの面下げて会いたいなんて言ってくるんですかね」
りゅうが若干の怒りを含みながら言う。俺は、ただじっとそのメールを見ていた。
麗は、どんな気持ちでこのメールを送ったのだろうか。
「先輩、そんなメールは無視ですよ無視!あんな奴、ほっとけばいいんです。なんなら、断りのメール送りますか?」
なんてぶつぶつ言っているりゅうを横目に、俺は返信を打ち始めた。
「せ、先輩?何やって……」
「返信打ってる」
俺の返事に驚き、りゅうは箸を落とした。
「な、なんでですか!あいつが先輩にした事、忘れたわけじゃないでしょう?もしかしたら、あいつは先輩に仕返しするかもしれないんですよ!!」
りゅうが俺の肩を掴み、激しく揺さぶる。けどその顔は、真剣に俺の事を心配してくれている顔だった。
「りゅう、落ち着いて!俺の話、聞いて!!」
俺が叫ぶと、りゅうはピタリと止まる。そして、ゆっくりと手を離して、話を聞いてくれる体制になった。
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