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翌日、少し早めに家を出てCloverに到着する。開店したばかりの時間に到着したので、お客さんの姿は片手で数えるほどしかいなかった。
「実くーん!こっちこっち」
凪瀬さんが大きく手を振って俺を呼ぶ。近づくと、カウンターの中でバイトの制服に着替えたりゅうが座り込んでいた。その隣には、何故かティーセットとケーキがあった。
「先輩、おはようございます」
「おはよう。で、何やってるの?」
俺の質問に、りゅうは何当たり前のことを聞いてくるのだ。という顔で言った。
「何って、ここで先輩の話を聞くんですよ。もしあいつが何かしたら、ここから飛び出すつもりです」
「あ、そう……」
絶対麗が何かすると思っているのか、何度か殴る素振りを見せるりゅう。それを見ていた俺の肩に、来栖さんがポンと手を置いた。
「安心しろ。綾が飛び出しそうになったら、俺達が全力で止めるから」
「とか言って、もし綾ちゃんが飛び出さなかったら、代わりに水ぶっかける気満々な癖に」
来栖さんの言葉に安心したのもつかの間、凪瀬さんの言葉に驚く俺。
来栖さんは小さく舌打ちをすると、凪瀬さんの胸ぐらを掴みに行った。
「お前、一度死んどく?」
「ちょ、暴力反対!!」
またいつものように暴走するかと思ったが、それを止めたのはマスターだった。
「二人とも、そこまで。お客さんがいるんですから、仕事に戻って下さい。龍一君も、お皿を出すこと忘れていますよ。それから実君、そこの予約席に座って下さいね」
各自に的確な指示をするマスター。三人は渋々ではあったが、マスターの指示通り動いていた。
俺も、マスターに言われた通りの席に座る。その席は窓際で、俺の座った方からはカウンターの様子を見ることができた。
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