りゅうという人

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 りゅうと屋上であった日の放課後。麗が弁当箱を返してきた。持ってみると、朝より少しだけ軽かった。 「悪い。今日母さんが弁当作っちゃってさ。おかず、クラスの連中にやっちまった」  証拠とでも言うように、弁当箱の包みを見せる麗。  こうすれば誤魔化せると麗は思っているんだろう。  でもね、俺には姉さんがいるから知ってるんだ。  その包みが女の子に人気の、ブランドの物だってこと。そして、麗から香ってくるのが、女の子用の香水の香りだってこと。 「あ、それで明日から弁当いらないから。代わりにお金頂戴」 「……はい」  麗に渡したのは、昨日貰ったばかりのバイト代。麗は俺の給料日を知っているから、誤魔化すことは出来なかった。  給料袋を受け取って、さっさと帰って行く麗。その目線の先には、可愛い顔立ちの女の子たちがいた。 「遅いよー」 「ごめんごめん。今から皆で遊びに行こう!俺が奢ってあげるから」  女の子たちに囲まれながら、麗は帰って行った。 「……名前、呼んでくれなかったな」  と、呟いてから気づいた。  そっか、俺の名前も知らないんだった。  ズキリとする胸の痛みを知らんぷりして、俺は鞄を持つと、近くのスーパーへと向かった。  今日の夕飯と、明日のお弁当のおかず、それからプリンの材料を買って家に帰る。帰ってすぐ、俺はプリンを作り始めた。  作りながら思い出すのは、りゅうの嬉しそうなキラキラした目。あの目がもう一度見たくて、俺は真剣にプリンを作っていた。
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