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麗の元気が無かった理由が分かったからいいものの、その話が一体俺となんの関係があるのだろう。 麗の考えていることが分からず戸惑っていると、麗は顔を上げ俺の顔をじっと見た。
「それでようやく気付いたんだ。……ああ、大谷はこういう気持ちだったのかって。女の子たちは遊びって子が多いけど、大谷は俺の事本気で好きだったろ?」
俺はたぶん、この時ぽかんとしていたのではないだろうか。りゅう達もじっと見ているだけで何も言ってこなかった。俺は、小さく頷いた。
「……そうだよな、本気だったよな。それなのに俺、散々利用しといてあっさり捨てて。最低な事をしたことは分かってる。許してもらえるとも思わない。けど、最後に謝りたくて……。すまなかった」
深々と俺の目の前で頭を下げる麗。そんな麗を見ていて、俺はどうすればいいのか、正直分からなかった。
麗の雰囲気を見れば、本気で謝っているのだということは分かる。けど、だからって謝られてそれで終わりって言うのも納得がいっていない。
だいたい気持ちが分かったとか、軽々しく言わないでほしいし、今まで俺がやってきたことって、結局何だったって話になる。麗が俺に言いたいことはそれだけかもしれないけれど、俺が麗に言いたいことは、比べ物にならないくらい沢山あるのに。
なんて思ってみても、文句を言ってどうするんだって話になる。文句を言うだけ言って、『責任とって付き合い直せ』とでも言えばいいのかもしれないが、そんなこと言えないし言うつもりもなかった。
俺は、まだ頭を下げたままの麗に聞いた。
「……ねぇ、麗。仮にも付き合ってた時にさ、俺の事を好きだった時があった?」
俺の問いかけに麗は、驚いた顔で顔を上げる。が、すぐに視線を逸らした。
この質問は、最後に絶対聞いておきたかった。態度を見れば答えを聞くまでもないが、麗の口からちゃんと答えを聞きたかった。
「……俺は、大谷の事、そう言う風には見れなかった」
予想していた通りの答え。それでも、何故かその答えには納得が出来た。
「そっか」
「……けど、大谷の作った料理は、美味かった」
とってつけたような言葉だと、りゅう達は思うかもしれない。でも、ちゃんと俺の目を真っすぐ見て言ってくれたことが嬉しかった。この言葉が、嘘じゃないと確信できたからだ。
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