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俺はその質問の答えを誤魔化した。が、りゅうはまったく気にしていないようだ。
りゅうに携帯を返してもらい、電話帳を確認すると確かにあった。
家族の名前と、麗の名前の次に入った、「綾瀬 龍一」の名前。ただそれだけのことなのに、つい嬉しくて笑ってしまった。それはりゅうも同じのようで、嬉しそうに画面を眺めてから、楽しみにしていたであろうプリンにぱくついた。
「先輩、メール今日のいつぐらいなら返せそうですか?」
「うーん。今日はバイトがあるから、九時以降かな」
「へー。先輩もバイトしてるんですか。僕もやってるんですよ、週四で」
俺も同じくらいやってるな。まあ、ほとんど麗にやる為なんだけど……。
「りゅうはなんのバイトやってるの?」
「一応、カフェですよ」
なんとなく、「一応」の部分が気になったけど。え、カフェなんだよね?
「ちなみに、なんの仕事?」
「僕、キッチン担当ですよ」
「え、味見係とか……?」
俺がそう言うと、りゅうは頬を膨らませて怒った。
「ちーがーいーまーすー。ちゃんと料理作ってましたよ。でも、ちょっとしかつまみ食いしてないのに、なんでかホール係にまわされちゃったんですよね~」
……ああ、それはまわされるよ。
なんとなく、簡単に想像出来てしまった。
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