りゅうという人

7/16
前へ
/115ページ
次へ
 俺はその質問の答えを誤魔化した。が、りゅうはまったく気にしていないようだ。  りゅうに携帯を返してもらい、電話帳を確認すると確かにあった。  家族の名前と、麗の名前の次に入った、「綾瀬 龍一」の名前。ただそれだけのことなのに、つい嬉しくて笑ってしまった。それはりゅうも同じのようで、嬉しそうに画面を眺めてから、楽しみにしていたであろうプリンにぱくついた。 「先輩、メール今日のいつぐらいなら返せそうですか?」 「うーん。今日はバイトがあるから、九時以降かな」 「へー。先輩もバイトしてるんですか。僕もやってるんですよ、週四で」  俺も同じくらいやってるな。まあ、ほとんど麗にやる為なんだけど……。 「りゅうはなんのバイトやってるの?」 「一応、カフェですよ」  なんとなく、「一応」の部分が気になったけど。え、カフェなんだよね? 「ちなみに、なんの仕事?」 「僕、キッチン担当ですよ」 「え、味見係とか……?」  俺がそう言うと、りゅうは頬を膨らませて怒った。 「ちーがーいーまーすー。ちゃんと料理作ってましたよ。でも、ちょっとしかつまみ食いしてないのに、なんでかホール係にまわされちゃったんですよね~」  ……ああ、それはまわされるよ。  なんとなく、簡単に想像出来てしまった。
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1628人が本棚に入れています
本棚に追加