涙と昼寝と後輩と

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 俺の名前は大谷 実。(オオタニ ミノル)普通の男子高生。ちなみに二年。  って、ここまでは小説とかでもよく使われるテンプレート。小説とかだったら『実は、彼には隠された秘密があるのだ!』とか、『彼は誰しもを魅了するフェロモンの持ち主なのだ(しかも無自覚)』なんていう展開があるんだろう。  先に言っておきます。そんな展開、この先絶対ありません。  勉強もスポーツも中の中。体格も中肉中背なら、顔立ちだって中の中から中の下の間ぐらい。小説で言うと、脇役以下のモブだ。  さて、話ががらっと変わって。  そんな俺には、付き合っている人がいる。隣のクラスの天城 麗(アマギ レイ)だ。  名は体を表すとはよく言ったもので、背が高くて顔立ちは美形中の美形。勉強も出来てスポーツも出来て、明るいクラスの人気者だ。  なんでそんな麗が俺なんかを?って誰もが思うだろう。俺だってそう思った。だから、麗から告白してきた時は、驚き過ぎて何も言葉が出なかった。  でも、実は俺、入学した頃から麗に一目ぼれしてて。  頭のどっかでは釣り合うわけないって思ってたのに、つい「付き合おう」って言っちまった。  思えば、この時点でおかしいって気づくべきだったんだよな。  付き合いたての頃は、一緒に帰ったこともあるし、キスもした。「好きだよ」「愛してる」って言ってくれた。俺はそれだけで、幸せだったんだ。  けど、いつからだろうか。麗が話しかけてくれなくなったのは……。  付き合って半年くらいが過ぎた時、麗がお願いをしてきた。 「お弁当作って」 「宿題やってて」 「お金貸して」  一個目以外はお願いっていうより、パシリに近かったけど。おかしいとは思っていたけど。  けれど、離れるのはもっと嫌で、俺は全部に頷いてしまったんだ。
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