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平凡すぎる俺は、何も出来ない。
可愛くもないし、キスだって下手だし。出来ることといえば、麗の足枷にならないよう、麗の頼みを聞くぐらいだ。
だから、苦手だった料理も頑張ったし、夜までバイトして、バイト代を全部麗にあげた。
これぐらいしないと、麗に捨てられるかもしれない。と思ったんだ。
今日も麗に弁当を届けに行く。
今日のおかずは、麗の好きな唐揚げとポテトサラダ。あと、端の方に卵焼きが二つほど。
喜んでくれるかな?
なんて思いながら、麗のクラスのドアを開こうとした時だった。
「なあなあ。天城ってまだ大谷と付き合ってんの?」
「……大谷?誰そいつ」
……今のは確かに、麗の声だった。俺は静かに話を聞いていた。
「誰って……。ほら、天城に弁当とか金とかくれるやつ」
「ああ。あいつ大谷っていうんだ。付き合ってるわけないじゃん」
「えー?でも、天城、あいつにキスしてたじゃんか」
「ああ、あれ?告白もアレも、単なる罰ゲームだったんだけど、それじゃあ可哀想だからパシリとして使ってやってんの」
「うわっ、大谷かわいそー。まあ釣り合うわけがないけどなー」
「だろ?それに俺には、美麗ちゃんと友恵ちゃんがいるし」
「ちょっとー。ここに堂々と二股発言してる人がいますよー」
げらげらと笑っている二人の会話を聞いて、俺は近くの生徒に、麗の分の弁当を渡し、その場を離れた。
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